続・「ピンク髪」のキャラの髪は本当は何色なのか?問題
前回の続き
前回記事についたmsdbkmさんのブコメなども参考にしつつ。
小説(ラノベを含む)
小説においては、隠喩も一般的であるから、字面どおりに受け取った場合の事実と、その文字が意味している事実が異なることも認めやすいように思える。
前回の記事でラノベを言及対象からひとまず除外したのはこのため。
また、ラノベについては、文章だけでなく、表紙絵・挿絵があるのでさらにややこしい。
ただ、隠喩か生の事実の率直な描写かを判別するのは、結局、「現実にあり得るか」であるような気がする。
逆に言えば、現実にあり得る隠喩は隠喩に気づくことが難しい。*1
白黒(時々カラーになるものも含む)マンガ
白黒のマンガで表現される世界が、「本当に」白黒である、というのはマイナーな解釈だと思われる。
「本当の世界」はカラーであり、それが白黒で表現されているというのが一般的な理解だろう。
絵による隠喩
では、絵で表現されるマンガにおいては隠喩がないか、というと、そうではないように思える。
例えば、激怒したキャラの顔面が般若のお面になるマンガがあったりするが、こういうのは絵を使った隠喩といえそうである。
ルビ問題
書かれたものとそれが示す「現実」の乖離という点で共通する話としてルビの問題がある。
例えば、HUNTER×HUNTERでヒソカが「伸縮自在の愛(バンジーガム)」というセリフを発するとき、ヒソカが声に出してるのは、「バンジーガム」なのだろうか。
「伸縮自在の愛」はヒソカが心で思っているだけなのだろうか。
悲しいことに作者の画力が追いついてねー‼︎問題
作中設定では美男or美女なのに、作者の画力の問題か、絵では美男美女に見えない問題。
これは実際は美男美女ということだろうか。
関連する問題として、「平凡な女の子」のはずの主人公が、美形設定のライバルキャラと同じような顔にしか見えなかったりするのは、解釈に困る。
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と、ここまで書いて下書き状態で放置していたのだけど、参考になる論文を見つけた。
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/226263/1/cap_6_2.pdf
誰かしら論じていそうだけど、そもそもどの学問の領域なのか?というところから分からなかったので、手がかりが見つかってよかった。
単語の説明も分かりやすい。
この論文における単語の使い方は以下のとおり。
図像:基本的には絵と写真のこと
デザイン:図像による表象を構成する平面上の視覚的性質
対象:図像が表象する外部のもの
内容:図像が対象に帰属させる性質
およそデフォルメ等*2を認めず、「キャラクターの図像はキャラクターの真の姿(形象的性質)をあますところなく正確に示している」とするのが①正確説、デフォルメ等を認め、公式の図像の一部はキャラクターの形象的性質についてわずかにしか情報を与えないとするのが②非正確説とされているようである。
前回の記事における疑問の一部は、正確説的な立場からの物言いだったように思える。
論文にはモノクロマンガの色の不確定性やクリリンの鼻の話も出てくるし、執筆者のブログには「ナニワ金融道の美男美女設定のキャラが美男美女に見えない問題」や「リアルドラえもん」の話も出てくる。
また、デフォルメ等(暗黙的非コミット)なのか真の姿(形象的性質)なのかという解釈は、「 (1) 世界に存在するものについての知識、(2) 図 像に描写されうるものについての知識、(3) 描写を制作する手段の知識」が利用される、とのこと。
論文の直接のテーマとは違うところもあるけれど、ピンク髪問題を学問的に整理するとどうなるのか、がなんとなく分かってとても良かった。
おわり