「ルックルック」改訂226010稿_ ご意見対応リリース_210715r2(Bパターン_1行追加ver.)

その漫画の反響は凄まじかった。

ある漫画家の新作読切り「クッルクッル」。  

ネット媒体で公開されたそれは、そのクオリティの高さから、大いにネット内外で話題となった。  

一方で、否定的な意見もあった。  

作中の描写に問題があるというのだ。 

そのような声は、公開後、数日のうちに大きくなっていく。

指摘を正当と認めた作者と編集部は、作品を一部修正することとした。

 

話はこれで終わらない。

修正後の描写にもまた、別の害悪がある、との批判が噴出したのだ。

前例がある以上、「修正は一律できない」といった言い訳は通じない。

修正しないということは、問題描写を是認するものだと捉えられてしまう。

作者と編集部は、再度の内容変更を余儀なくされた。

 

事態はさらに進行する。

天下の大雑誌に修正を受け入れさせ、名をあげんとする過激主義者、目立ちたがりの愉快犯、表現の自由を至上命題とする戦士たち。

ネット上では、「クッルクッル」の問題点探しとその反論が大いに盛り上がる。

批判、修正、批判、修正、批判、修正、批判……。

作品の更新のたびに、読者は変更点を見比べて思い思いに論評をする。

掲載サイトのアクセス数はうなぎのぼりだ。

作品批判の盛り上がりには、編集部が関与していたという説すらある。

 

当初は文字部分に留まっていた修正だが、そのうち、影響は絵にまで及ぶ。

数十回の描き直しを経て、作者らは大きな決断をする。

「クッルクッル」の小説化である。

新たな作品としてのノベライズではない。

漫画で発表したこと自体を変更し、小説だったことにするのだ。

度重なる修正の負担を考えた、苦肉の策であった。

 

それでも、ご指摘は止まらない。

小説にしたことで、これまで明確な描写がなかった部分も描写する必要が生じ、かえって批判を呼んだ側面もあった。

数千回数万回の修正を経て、タイトルも、キャラクターも、ストーリーも、大きく変わった。  

女性2人の青春譚だった原作漫画30ページは、いつしか、文庫本換算にして8000ページ超、主要キャラは男性100余人のSF架空戦記小説へと変貌していた。

一時は、俳句、映画、編み物、学術論文、小便器などの形式をとったことからすれば、これでも初出時の内容に近いほうだといえるかもしれない。

 

ある時、やけになった作者は、全ての内容をリセットした。

これまでの顛末を小説にまとめたものを、新たな改訂稿としたのである。

そのタイトルは、「『ルックルック』改訂226010稿_ ご意見対応リリース_210715r2(Bパターン_1行追加ver.)」。

 

当然ながらこれもまた、修正を余儀なくされることだろう。

本作は、永久に内容が確定しない作品として、その実存を確定させたのだ。

 

※頂いたご指摘を踏まえて、内容を一部修正しました。

 

おわり